STARTS INTERNATIONAL VIETNAM CO., LTD

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ベトナムお役立ち情報

【執筆者】弁護士 入江

名前;入江克典

所属;渥美坂井法律事務所ホーチミンオフィス(Atsumi & Sakai Vietnam)

役職;同オフィス代表、弁護士(パートナー)

得意分野;法務全般

会社ウェブサイト;https://www.aplawjapan.com/offices/ho-chi-minh-city

連絡先;katsunori.irie@aplaw.jp

NEW 法務
2025/04/21

【法務】2、ベトナムでの事業遂行(1)契約書の締結

【法務】2、ベトナムでの事業遂行(1)契約書の締結
Q2-1-2 契約書の言語は自由に決められますか。 A:契約書の使用言語は、消費者契約等の例外を除いて原則として自由に選択可能です。ただし、当局提出に際してはベトナム語版が必要となるため、日系企業のベトナム現地法人であっても、税務当局への提出等を念頭に、ベトナム語版の作成を要請することが少なくありません。 実際には、日系企業が一方当事者となる場合、英語、日本語、ベトナム語のうちの一つ又は複数の言語で契約書が作成されるのが一般的です。複数言語で契約が締結される場合、各言語の契約書間で齟齬等が生じる可能性があるため、解釈上優先される言語を優先言語として規定しておくことが重要です。 Q2-1-3 契約の準拠法は自由に決められますか。 A:ベトナム現地法人同士の取引においては、ベトナム法を準拠法としなければなりません。 一方で、現地企業と外国企業との契約等外国要素がある契約であれば、原則として、契約当事者の合意により準拠法を確定することが可能とされています。 ただし、不動産関連取引、労働契約、消費者契約等の一定の場合にはベトナム法を準拠法とすることが必須となる場合があります。
法務
2025/03/17

【法務】2.ベトナムでの事業遂行(1)契約書の締結

【法務】2.ベトナムでの事業遂行(1)契約書の締結
Q&A ベトナム企業との契約締結時の留意点を教えてください。 ベトナムでは、政府当局との関係や紛争解決の場面において、書面の存在や内容が重視されるため、取引に際しての合意は書面化しておくことが重要です。日本においてはいまだ口頭で取決めをする場面も多いですが、異なる意識を持つ必要があります。 もちろん口頭での合意も原則として有効ですが、書面を含む一定の様式による契約締結が求められる場合があります。例えば、不動産取引に際しては契約書の公証が必要となりますし、株式譲渡取引の場合には当局登録に際して株式譲渡契約書の提出が必要となるため、書面により契約を締結しておく必要があります。 また、契約締結に際しては、署名者の契約締結権限について、事業ライセンス、定款、委任状等の提示を求め確認することが一般的に行われています。 加えて、ベトナムにおいて、金融機関以外の一般事業者は、土地使用権や建物に対して担保を設定することが認められておらず、取引相手方の債務が不履行に陥った場合の公的機関を通じた債権回収が実務上容易ではありません(裁判を通じての執行が難しいことについてQ1-3をご参照ください)。したがって、取引開始に際しては、相手方の信用状態を調査したうえで、契約上の支払時期を前払としたり早い時期にしたりすることや、売掛債権が過大にならないよう日頃から管理を徹底することが重要となります。
法務
2025/02/13

【法務】1.ベトナム法制度の概要(3)

【法務】1.ベトナム法制度の概要(3)
Q1-4 法制度の構造について教えてください。 A:国家の基本法である憲法を頂点とし、年に2回開催される国民議会により、法律が制定・改正されます。近年、重要な法律は、立法計画に基づき5年から10年程度の周期で改正されています。 法律は、最低限の内容を抽象的にしか定めていないことが多く、その運用のために法律の下位規則が制定されます。 下位規則には、政府より発出される政令(Decree)、関係省庁により発出される通達(Circular)などがあります。これらが実務運用のためのガイドラインとして機能しており、用いるべき書式のテンプレートが掲載されていることもあります。 さらに、行政当局が個別の事案に対してオフィシャルレターを発出している場合があり、同種事案に対する一般的な解釈指針として機能していることもあります。 以上のとおり、ベトナムでは、日本と比べると、定期的に法律が改正されるうえ、政令や通達等の下位規則も頻繁に制定されます。最新の法情報に注意を払っていないと、会社が法令違反の状態となっていて罰金を課されたり、ライセンスの更新が認められなかったり、といった事態になりかねません。また、下位規則によっても解釈が定まっていないケースがままあり、行政当局と折衝しながら慎重に運用を進めざるを得ないことも多いです。  
法務
2025/01/23

【法務】1、ベトナム法制度の概要(2)

【法務】1、ベトナム法制度の概要(2)
Q1-3 司法制度、紛争解決方法について教えてください。 A:日本と同様、当事者間での交渉が決裂した場合、弁護士名義で書面を送付し交渉を継続した上、交渉がうまくいかない場合には裁判や仲裁といった紛争解決手段にでることが一般的に行われています。 日本国内であれば裁判により紛争を解決することが多いですが、ベトナムの国内裁判所は外国投資家が利用するには必ずしも適しておらず、仲裁が好まれる傾向にあります。 以下の表では、ベトナム国内・外における裁判・仲裁利用時の留意点についてまとめています。 ベトナム国内 ベトナム国外 裁判;手続きが公開となり、審級ゆえに長期化の可能性が有る他、言語の選択が不可 判決の中立性、公平性にも問題があり、外資企業にとって不利となる傾向。長期化の傾向もあり避けることが望ましい。 日本などの裁判所で有利な判決を得ても、相互保証がないため執行が事実上困難。 仲裁;言語、場所、専門知識を有する仲裁人の選任を含め、手続きをある程度自由にアレンジ可能 ベトナム仲裁センター(VIAC)が有名で、取扱件数も増加傾向。 東京やシンガポールでの仲裁が選択されるケースが多い。ただし、ベトナムでの執行リスクあり(外国仲裁判断の執行には、ベトナムの裁判所を経由する必要gああり、不当な理由で拒絶されることもあるとされる)
法務
2025/01/23

【法務】1、ベトナム法制度の概要(1)

【法務】1、ベトナム法制度の概要(1)
Q1-1 ベトナムの法制度の特徴について教えてください。 A:ベトナムは、フランス統治以前の伝統的法体系及びフランス統治下の大陸法の影響により、制定法が重視されています。 また、憲法において「社会主義的法治国家」であると規定されているとおり、共産党の一党独裁の下、欧米型の三権分立を採用せず(民主集中制)、私人による土地所有権を認めないなど、社会主義体制下で見られる特徴もあります。 以上により、ベトナムにおいては、全ての法的なルールを法令や通達(法規範文書)に定めたうえで市民社会を規律しようという考え方が根本に存在します。 近時では、1986年のドイモイ政策の採用、市場経済システムの導入、1995年のASEAN加盟、2007年のWTO加盟を経て、企業法、証券法などの市場経済に関連する法令においては、概ねグローバルスタンダードに則しているといえます。先進諸国による法整備支援も行われており、日本政府(JICA)の支援により民法典、民事訴訟法典などが改正されています。 Q1-2 法実務・運用上の留意点について教えてください。 A:まず、法令について、法令上の記載が曖昧で一義的でない、法令間における矛盾・抵触がある、法律の施行細則の公布の遅れのため実務運用が明確になるまで時間を要するといった問題点があります。 そして、それらの結果、当局担当官によって運用が異なる(運用が進まない)、場合によって手続促進のために金銭等を求められるといったことが生じます。 また、2015年より最高人民裁判所において「判例選定制度」が開始され、同裁判所が選定した判決又は決定に限り先例として拘束力が認められることとなっています。判例が引用、適用されるケースは増加している一方、当該判例のどの部分が拘束力を持つのか明確ではない判決等もあり、具体的な判例の適用事例の集積によって、その運用がより明確になっていくものと考えられます。

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